ここではモンテッソーリ教育という言葉を
始めて聞かれた方向けにお話ししたいと思います。
最近は将棋の藤井総太さんの活躍で
テレビや雑誌に取り上げられていて
関連書籍や動画などで発信されている方も
たくさん出て来ましたので
聞いたことがある方も
多いのではないかと思います。
いろいろ勉強してよく知っておられる方は
読まなくて大丈夫です。
ここでは、
「聞いたことはあるけど正直言って
どんなものなのか、よく分からない」
という方のために、
モンテッソーリ教育とは
どんなものなのか簡単に説明したいと思います。
それから、
モンテッソーリの子どもの見方を
お伝えするとともに、
具体的にどんなことを行うのかを
まず知ってもらいたいと思います。
そして、
モンテッソ―リ園などで行われている
教具を使った教育の面白さ、
これはなかなか実際に見てみないと
分からないのですが、
少しでもよく知ってもらいたいので
ぜひ皆さんにお伝えしたいと思いました。
それから、
「マリア・モンテッソーリの人物像」や
「モンテッソーリ教育の成り立ち」の詳細を
紹介することにします。
合わせてモンテッソ―リ教育を受けた
著名人も紹介しますね。
目次
モンテッソーリ教育とは?簡単に言うと?
モンテッソーリ教育とは、
イタリア人の女医であり教育者でもある
マリア・モンテッソーリが子どもを
観察して作り上げた教育方法です。
モンテッソーリ教育の目的は、
「自立していて、有能で、
責任感と他人への思いやりがあり、
生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てる」
ことです。
(日本モンテッソーリ教育綜合研究所
ホームページより)
大前提となる子どもの見方として
『子どもには自分を育てる
「自己教育力」があって、
子どもが今やりたいこと、
繰り返し集中してやることは
自分を育てるため
自立して行くために必要なことだから
心ゆくまでやらせてあげましょう。
そうすることで
子どもはその能力を余すことなく
発達させることができますよ。』
というものがあります。
わかりやすい例を挙げると
ティッシュペーパーをつまんで
次々と取り出したり、
トイレットペーパーを
たくさん引き出したり
階段を何回も昇り降りしたり、
やたらと重いものを運ぼうとしたり
する時期ってありますよね。
そういう時期は特にその能力が
飛躍的に伸びる時期で、
身体をそのように動かすことによって
筋肉や神経が発達して
思った通りに動かせる身体に
なって行きます。
大人だってスポーツをする時は
身体が思った通りに動かせるように
なるように何度も練習しますよね。
それと同じように小さい子どもは
大人から見たら当たり前の動きが
まだ上手に出来ないので、
何回も身体を動かして練習し、
筋肉や神経を発達させているのです。
そしてその時期は自然に仕組まれているのです。
この様な時期のことをモンテッソーリ教育では
「敏感期」と呼びます。
モンテッソーリ教育でいう敏感期とは?
この時期にやることの中には
先程のトイレットペーパーの例や、
すき間にものを落としたり
本棚から次々本を取り出したりといった、
大人から見ると
一見困った行動に見えることがあります。
それらが発達に必要な行動だったと知れば、
敏感期に合わせた環境
(例えばフェルトで
ティッシュペーパーの代わりに
引き出すものを作ったり、
チップ落としを作るなど)を準備したり、
その時期が過ぎれば
もう無駄なことはやらなくなると
分かっていれば毎回叱らずに見守り、
ティッシュなら集めて汚れたところを拭くのに
再利用したりしながら
その時期が過ぎるのを待てますね。
「あ、今は階段昇り降りの時期だな」と思ったら
安全に配慮してそれに合った
場所や時間を考えて
付き合ってあげることができますよね。
また、子どもが自分でやろうとしていることを
「まだ早い」
などと言わずに見守ることが出来ますね。
自分でやろうとして出来なくても
まだ自分でなんとかやろうとしている時は
危険がない限り手出し口出しせず
見守ってあげましょう。
子どもが何か訴えてきたり、
手伝って欲しそうなときは
『「手伝って」だね~』と言いながら
(言葉を伝えるため、
また、困った時に「助けて」と言える
「助けてもらえる」安心感を育てる経験のため)
手伝うか、
ちょっと頑張れば
自分で出来そうか判断してください。
そして、困っているけれど
もう少しで出来そうと思ったなら
まず言葉やジェスチャーで教えてあげて見守り、
出来たら一緒に喜んであげましょう。
そして本当に難しそうなところだけ
手伝ってあげましょう。
自分でやろうとしたことが「できた!」
という体験の繰り返しが、
子どもの自己肯定感や
「自分で出来る」という自立心を高めます。
重いものを運びたがる時期は、
腕や全身の筋肉を鍛える敏感期です。
買い物に行ったら子どもは荷物を運びたくて、
でもママからしたら子どもには重すぎるし、
引きずるし運ばせてあげるわけには
いかない時もありますよね。
そんなことでスーパーで一悶着なんて、
早く帰りたいのに
「もう~、何で?やめてよっ!!」
てなることありませんか?
でも、これが敏感期だとわかっていれば
子ども用のマイバッグを準備して
荷物の一部を持ってもらうことも
出来るのです。
買い物の荷物でなくても、
普段からリュックに子どもの荷物
(おむつやお茶)などを入れて
自分で持つようにします。
自分のことは自分でやるという
自立への方向性ですね。
着替えなど、「自分でやる」と言い出したのに、
なかなかうまく出来ないこともありますね。
出来なければ
まずゆっくりとお手本を見せてあげて、
それでもまだすぐには出来ないと思うので
頃合いを見計らってもうすぐ諦めそうかな
というところで、
どうしても出来ないところだけ
手伝ってあげることです。
但し、「自分でやる」と言っても
始めからうまく出来なくて当たり前で、
試行錯誤して上手になっていくのです。
「自分でやる」と言い出したら、
その分の時間も計算に入れて
予定をたてるといいですよ。
そうすればイライラしないで見守れますね。
モンテッソーリ教育では
子どもの発達段階に合わせて
様々な環境を準備しています。
ここではやさしく説明するために
大きく2つに分けてみます。
一つは、このように、
モンテッソ―リの考え方を元に、
家庭生活の中で行えること、
もう一つはモンテッソーリ教育の
幼稚園や保育園、幼児教室など
用具や教具を揃えた環境で行えること、
があります。
家庭生活の中で行えること
「日常生活の練習」は、
生活全般に渡って
自分のことは自分でできるようにしていくこと、
子どもがやりやすいように環境を整え、
一人でできるようになるように
援助していくことです。
モンテッソーリ教育と言わなくても
やっておられる方もあるかもしれません。
では、モンテッソーリ教具や用具を
揃えた環境で行えることは
どんなことなのでしょうか?
次に詳しく見ていきましょう。
モンテッソーリ教具や用具のある環境で出来る教育
モンテッソーリ教具は、
「感覚教育」
「言語教育」
「算数教育」
「文化教育」に使う用具です。
例えばモンテッソーリ教育の「算数教育」では、
幼児期に4桁の
足し算・かけ算・ひき算・わり算を行います。
こういうと英才教育のように
思われるかもしれませんが、
モンテッソーリ教育は英才教育ではなく、
子どもが興味を持って
学べるように工夫されています。

数はもちろん一桁から学びますが、
4桁の数を学ぶ時は
子どもが思わず触りたくなるような
ピカピカの金ビーズを使います。
こんなふうに1000の金ビーズも
本当に1000個のビーズが
繋げて立体になっています。
学校の算数で1000と言っても
数字で読んだり書いたりするだけで
具体物を1000個も扱うことって
ないですよね。
でもここでは具体物を使うんです。
だから小さな子こどもに
もわかりやすいんですね。
その具体物を使って数えながら
「1・2・3・・・・10。
1が10個で10。
10の金ビーズ
(10個のビーズが棒状につないであるもの)
と同じ」
「10の金ビーズが10個で100。
100の金ビーズ
(10の金ビーズを10本まとめて
板状につないであるもの)と同じ。」
「100の金ビーズが10個で1000。
1000の金ビーズ
(100の金ビーズを
10枚まとめて立方体につないであるもの)
と同じ。」(実際にはもっと丁寧に数えます)
のように4桁の数を知り、
数字カードも使って数量と数字と
数詞(いち・に・さん・・・)を一致させ、
(もちろん、もっと初めの段階では
算数棒で1~10を一致させるところから
始まります)
そのあと繰り上がりや繰り下がりに
対応できるように両替遊びをします。
そして両替遊びをよく理解できたら
次のたし算に進みます。
たし算では三人の子どもが持ってきた
金ビーズを数えてから一緒に合わせるのですが、
全部のビーズをテーブルに敷いた布で
包んで合わせるのです。
この合わせかたがちょっと驚きがあって
私たち大人でも「えっつ、そうするの!!」って
びっくりして面白いと思いました。
なので、子どもにもきっと面白いと思いますよ。
それを見た多くの方が
「私もこんな風に習ったら
算数を好きになったかも。」と言っていました。
(これを見ておられるパパやママ
、お子さんにはナイショですよ。
先に言っちゃったら
初めて見た新鮮さが激減しちゃいます(笑))。
その後、
金ビーズを各くらいごとに分けて数えます。
この計算を数字カードで
式にもあらわしながら行います。
このように、子どもが興味を持って
楽しく学べるように考えられているのです。
このように子どもがいろんなことを吸収したい
敏感期にその時期に合ったものを準備しておき、
提示(使い方を示すこと、提供ともいう)
してあげて
その子がやりたいと思ったら取り組みます。
教具や提示は
子どもがやってみたくなるように、
理解しやすいようにまた、
楽しんでできるように出来ています。
また、このような園では
日常生活の練習も行っていて、
「日常生活の練習」に使う用具
ももちろん数多く準備されています。
例えば、
「掃く」お仕事(練習のこと)
の時に使うほうきとちりとり
「包丁を使って切る」お仕事の時に使う
まな板や包丁や布巾や台ふき、
お花を活ける花瓶やハサミなど
それぞれ子どもに扱いやすいように
子どもサイズのものが準備してあります。
クラスは異年齢で行っているので、
上の子がやっているのを見て学んだり、
上の子が下の子に教えてあげることもあります。
やり方がわかれば
自分で選んで好きなだけ活動できます。
自分で選んだことに集中して
心ゆくまでやれるので心が満たされて落ち着き、
思いやりの気持ちもでてきます。
また、試行錯誤しながら
上手にできるようになっていくので、
使う物の性質をよく知ることが出来、
どうするとうまく行かないか、
どうするとうまくいくかもわかったうえで
「自分はできるんだ」という気持ちが育ちます。
どうでしょう?
モンテッソーリ教育に
興味を持っていただけたでしょうか?
ここまで知って
マリア・モンテッソ―リがどんな人か、
モンテッソ―リ教育は
どうやって成り立っていったのか
知らないのはもったいないですね。
次にお話していきますね。
モンテッソ―リ教育を生みだしたマリア・モンテッソ―リとは?その教育法の成り立ちは?

マリア・モンテッソ―リは
1870年にイタリアの中産階級の家庭に
生まれました。
両親は自由主義的な家庭で
マリアは自立心の強い子どもに育ちました。
小学校時代は数学に興味を持ち
その後工業系の学校に進学したマリアでしたが、
1890年に突然志望を変えて
ローマ大学の医学部に入学しました。
その頃イタリアではまだ女性の地位は低く、
女性で医学部に入学したのは
モンテッソーリが初めてだったそうです。
そのため、解剖実習では
男子学生と同室で行うことが許されず、
一人で別に行わなければならない
というような苦難を乗り越えて
1896年にイタリアで初めての
女性の医学博士となりました。
その後ローマ大学付属の精神病院に就職した
マリアは、ある発見をします。
その頃、精神病院の患者は
鉄格子で囲まれた暗い部屋に閉じ込められた
劣悪な環境で、
障がい児達の患者の部屋にも
遊ぶものも何も無かったということです。
この子ども達が食事が終るとすぐに
パンくずを拾いあさるのを
監視の女性は卑しく思っていたのですが、
医師であるマリアの見かたは違いました。
目という感覚器官を使い、
手を動かし指先でつまんで運ぶという
一連の動作、
感覚を刺激して動きを伴う活動を
子ども達は求めているのではないか
ということです。
そうしてマリアは、
障がい児達に
次々と指先を動かすような玩具を与えて
治療を試みました。
その、感覚を刺激する治療に
効果があると確信を得た彼女は
他の障害児達にも同様の教育を施し、
彼らに知能テストを受けさせた結果、
健常児の知能を上回るという結果が得られ、
イタリアの教育界や医学界に衝撃を
与えました。
このようにモンテッソーリは、
自立心や意志が強く、
観察眼に優れ、本質を見抜く力に
長けている人だったのですね。
その後、この感覚教育法を
ローマの貧困家庭の子ども達
(健常児であるが知能は低く抑えられていた。
モンテッソーリは知的障害の子ども達の
精神の発達に効果を上げた方法は
すべての子ども達を援助するのに
役立つはずだと考えていた)に
実施・応用する機会を得、
ここでも知能向上で著しい結果を得ました。
そうしてモンテッソーリ教育と呼ばれる
独自の幼児教育法を確立し、
この教育法はスイス・スランス・アメリカ・
イギリス・カナダ・オランダ・オーストラリア・
ドイツ・デンマーク・インドなど
世界各地で導入され、
各地で公演活動も行って
この教育の普及に尽力しました。
このように世界各地に広がった
モンテッソーリ教育は
多くの優れた人材を生み出しました。
どんな人材が生み出されたのか
次に見てみましょうね。
モンテッソ―リ教育を受けた著名人
今、日本では
将棋の藤井総太さんが活躍されていますが、
彼がモンテッソ―リ教育の幼稚園で幼少期を過ごし、
ある時、ハートバックという
紙で編んだバックを100個くらい
作り続けたという話は有名です。
海外では、
バラク・オバマ元アメリカ大統領、
Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏、
Amazonのジェフ・ベゾス氏、
Google共同設立者のセルゲイ・ブリン氏と
ラリー・ペイジ氏、
イギリス王室のヘンリー王子とウィリアム王子、
作家のアンネ・フランクも
モンテッソ―リ教育を受けたそうです。
まとめ
ここまで
・子どもには自分を育てる「自己教育力」がある。
・子どもが繰り返しやること
はいたずらではなく「敏感期」なので
子どものやりたいだけやらせてあげる。
・モンテッソ―リ教育を大きく分けると、
家庭生活の中で行える「日常生活の練習」と、
モンテッソーリ教育の幼稚園や保育園、
幼児教室など用具や教具を揃えた環境で
行えること、がある。
・「日常生活の練習」は
モンテッソ―リ園でも行われているが、
家庭でもできる
・モンテッソーリ教育の園では、
モンテッソーリ教具で「感覚教育」
「言語教育」「算数教育」「文化教育」
が行われる。
その方法は子どもに分かりやすくて
興味深いので子どもは自らの意志で学ぶ。
・モンテッソ―リ教育は
イタリア人初の女性医師であり、
教育者でもあるマリア・モンテッソーリ
によって生み出された。
精神科医となったマリアが
障害児の行動を観察して
指先を動かす玩具での治療を試み、
確かな成果を得て
後の知能テストで健常児を
上回る結果を得た。
そして、この教育法を確立し、
世界に広めた。
・そうして、世界に広まった
モンテッソ―リ教育を受けた著名人
を見てきました。
次回はおうちでできるモンテッソーリ教育
「おうちモンテ」についてお届けしますね。